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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

知財業界の歩き方(転職編)

1.はじめに

 要望があったので、少し特許事務所への転職について、触れたいと思います。

 諸々の事情で、昔特許事務所の採用に関わっていたこともあるので、このブログでは、若干採用サイドの話も織り交ぜながら説明します。

 知財業界への転身を考えている方や弁理士試験の勉強を始めた方の間で、まず話題に上がるのが「特許事務所ってどうなの?」「いつ転職しようか?」というような話題ではないかと思います。このような疑問に少しでも答えらればと思います。

 

2.特許事務所ってどうなの?

 特許事務所とは、簡単に言えば、特許出願を始めとする知的財産活動に必要となる様々なサービスを提供し、対価を得る(収益を上げる)組織です。つまり、詳細については省略しますが、特許事務所とは、基本的には、多くの特許出願(特に外国の絡む出願)を効率的に処理することで収益を確保する組織です。特許事務所は、最大手でも1000人弱の組織ですし、ほとんどの特許事務所は200人に満たない小規模な組織です。そのため、通常の企業と比較して、余剰人員は少なく、自分の成果(売り上げ)が給与に反映されやすいという意味で実力主義の側面が強いです。

 具体的に特許事務所で明細書等を担当する特許技術者(弁理士資格の有無に関わらず)の待遇で言えば、年収400万円程度から1500万円程度までがよく見る範囲かと思います。これはあくまでも特許事務所に勤務する特許技術者の待遇であり、弁理士で独立している場合はもっと収益を出している方も当然います。いずれにせよ言えるのは、年収の上限で言えば、特許技術者の待遇は、決して低くはありません。ただし、平均給与は決して高くはありませんので、そのような実力主義(成果主義)のスタイルが自分に合っているのかという点を考えるのが最も良いと思います。

 

3.いつ転職すれば良いの?

 数年前(私が弁理士試験の勉強をしていた時期)までは、特許事務所への転職は35歳まででなければ転職は難しいと言われていましたが、特にここ1、2年は弁理士試験の合格者が減っていることもあり、かなり裾野が広がってきている印象があります。また、特許事務所の数もかなり多いですから、特に事務所を選ばなければどのような年齢の方でも就職先自体は見つかるのではないでしょうか。

 ただし、特に業界未経験の場合であれば、一からそれを身に着ける必要がありますので、例えば、年下の上司から厳しい指導を受けるようなことを覚悟しないといけないかも知れません。その点を除けば、流石に若い方の方が伸びるスピードは早い印象はありますが、高齢の方でも十分に成功されている方はいると思います。

 

4.具体的にどのように就職活動をすればいいの?

 基本的に自分で探して応募するということも可能ですが、特許事務所は、非常に数が多いです。また、色々なところで話題にされると思いますが、特許事務所の内情は実際に中に入ってみなければわかりません。そのため、特許事務所への就職でよく利用されるのが、以下のような転職エージェントです。なお、いわゆるコネ(受験仲間やゼミのOB)も有効ですからコネがある場合はそれが一番確実かと思います。

 <転職エージェント>

 MS‐japan:管理部門(バックオフィス)・士業特化型転職エージェントNo.1のMS-Japanの求人・転職情報サイト

 リーガルジョブボード:法律系専門職の求人・転職サイト|リーガルジョブボード

 プロキャリア(LEC):就職・転職をご希望の方 | 企業法務職、知財専門キャリア転職、実務経験者派遣なら プロキャリア

 REX:公認会計士・税理士など経理財務に特化した求人・転職ならREX(レックス)|株式会社レックスアドバイザーズ

 <求人サイト>

 パテントサロン:★パテントサロン★ 特許・知的財産情報サイト

 

5.補足

 転職エージェントとは、近年注目を浴びている業態で、知財業界(特許事務所を含む)で一般的に利用されています。この転職エージェントは、求職者に対して就職先を斡旋するのですが、通常、求職者には一切の費用負担がありません。つまり、転職エージェントに対する費用は、求職者ではなく採用を行った特許事務所(や企業)が支払うことになります。

 例えば、特許事務所が転職エージェントを介して、求職者を採用した場合、初年度年収の30~40%程度の金額を転職エージェントに支払うという契約結ばれているというような形式です。即ち、転職エージェントとしては、求職者の年収が高く評価された方が、自身の利益も大きくなるようにビジネスモデルが設定されています。

 求職者の立場からすれば、転職エージェントは無料で利用ができる上に、給与や条件の交渉にも協力してくれるため、利用する価値は非常に高いです。

 なお、特許事務所にとっては、相当な費用を負担することになりますが、業界全体が人手不足の上に、マッチングも中々うまくはいきませんから、今では多くの事務所が転職エージェントを介した採用を視野に入れています。