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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

サッカーゲームで見る参入障壁の作り方

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1.はじめに

 

 前回のゲーム(e-sports)ネタの続編です。サッカーゲームを例にして、よりe-sportsが発展する方向性を技術や知財の観点を織り交ぜつつ、考えていきたいと思います。

 なお、私自身は、ウイニングイレブンは97~2017くらいまで現役でたまに大会に出る程度の中堅プレイヤー、FIFAはナンバリングタイトルをいくつか持っている程度の初心者、です。比較的ウイニングイレブンの方がやり込んでいるので、どちらかと言えばウイイレに寄ってしまうと思うのですが、そこはご容赦ください。

 

2.サッカーゲームの特徴

 

 まず現状のサッカーゲームの位置づけを確認しましょう。前回のブログでも示した通り、サッカーゲームは比較的運の要素があるものの、それなりに実力が反映されますし(トーナメントに比較的耐えられる)、戦術的な側面はあるものの個人技の要素もかなり高いという要素もあり、様々なゲームの要素を比較的バランスよく持っています。そのため、e-sportsには比較的馴染みやすい部類で歴史も古いです。

 このサッカーゲームには、他のゲームにはない圧倒的な利点があります。それは、リアルのサッカーと連動させることができるという利点です。そのため、今でJリーグのクラブ(例えば、FC東京)が専属のゲームプレイヤーを雇ったり、Jリーグがオーガナイザーとしてe-sportsの大会を主催するといった動きが出始めました。これは非常に特徴的な傾向であり、活かさない手はないでしょうね。

 また、現在のサッカーゲーム市場はウイイレ(KONAMI)とFIFA(EA SPORTS)の2強でしょう。お互いのタイトルを差別化するという意味でも、一つの重要な観点かと思います。

www.jleague.jp

3.例えば、こんなのはどう?

 

 では具体的な方法はどうかというと、、、

 それこそ関係者(夫々のクラブやゲーム会社)次第ということになるのですが、せっかくなので一つ例を挙げて考えてみましょう。

 大会の決勝戦を、ARやVRの技術を使って、実際のサッカーに近いような形で観客に提示するような観戦方式はどうでしょうか。ゲームの観戦って、プレイヤーの状況やゲーム画面を見るだけになってしまうので、地味なんですよね。特にサッカーゲームの場合は、実際のサッカーを見ている感覚とは全く異なるので、サッカーファンには結構違和感が出てしまうような気がしています。そのため、例えば、実際のサッカーに近いような形で観客に魅せる方向性というのは、サッカーゲームの一つの方向性として有望だと思います。

 ちなみに、今年のTGSでも、コナミブースにARを利用したウイイレのような技術が出展されていましたし、普通に近い世界を狙っている気はします。

 さて、このような技術を実現する場合、どのような点が障害になるでしょうか。まぁ細かく言えばいくらでも出てくるとは思いますが、例えば、一つ例を挙げるとすれば「オフザボールの動き」なんかがあると思います。サッカーゲームというのは、通常、1vs1の勝負ですから、基本的にはボールを持ったプレイヤーのみを操作します。

 まぁ仕様的には、いくつかボールを持っていない選手を操作する方法はあったりするのですが、正直、現状の仕様で満足しているプレイヤーはほとんどいないと思います。勿論、ゲームタイトルによっても差はありますが、結局、どのゲームタイトルであっても、まだまだ実際のサッカーのリアリティーは再現できていないように思います(さらに言えば、ゲームの勝敗も戦術面ではなく、結局個人技の部分で決まってしまうことが多い)。

 このような状況において、例えば、ボールを持っていない選手の動きに戦術的な意味合いをうまく盛り込んだ動きを実現するのに寄与する工夫や、それが難しいのであればARやVRを利用する場合に、少なくともボールを持っていない選手の動きを「自然に見えるように修正する」ような工夫があれば、実は結構な強みになるのではないかと思います(今回、関係会社の特許は全く見ても聞いてもいないため、既に出しているかも知れません)。

 勿論、これはあくまでも一例です。逆にプレイヤーの個人技に着目し、それを魅せるような演出もあり得ると思います。ただ、このような工夫について、特許が取得されていれば非常に強力な参入障壁になるのでは、、、?ということです。

 

4.発明発掘の考え方

 

 という訳で一例を適当に挙げて紹介してみました。

 実は今回の解析は、発明発掘における基本的なフローを紹介しています。まぁ本業でやるなら、もう少しエビデンスや実際のデータに基づいて時間をかけて解析しますが、思考の方向性は同じです。発明発掘のポイントは、「ビジネス上の重要なポイント(できれば技術的なポイント)を探索し、そこから特許法上の発明として具体的な発明を抽出する」ということに他なりません。単に特許を取ればいいという訳ではないし、ある程度業界に精通していないと難しいと思うのですがどうでしょうね。ちなみに今回とは逆で、企業が取得している特許から将来のビジネス展開を予想するような方法論も存在します。そちらの方が面白いですかね。取り敢えず、今回は以上。

 

*台風19号により被害を受けられた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。私自身も東京住まいなのですが、幸い被害が大きかった地域から距離がったため、ほとんど影響はありませんでした。