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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

書籍紹介(驚異の量子コンピュータ:宇宙最強マシンへの挑戦)

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1.はじめに

 さて、知財業界では「商標拳」が話題の今日この頃ですが、久々に重量のある本が読み終わったので、簡単にご紹介をしようかと思います。テーマは、量子コンピュータです。 

 

 驚異の量子コンピュータ:宇宙最強マシンへの挑戦(岩波科学ライブラリ) 藤井 啓祐(著)

 

 始まりは、知人弁護士からの「渡辺さん、量子コンピュータ分かります??」という質問でした。怖いですね、、、

 何を持って「分かる」というのか、どのレベルで理解していれば「分かる」と言って良いのか等々、未だに慣れないです。アカデミアの悪習なのかなとも思います。

 まぁ実際、私が工学系の大学院(専攻は神経科学)に在籍していた10年ほど前の感覚では「量子コンピュータ」と言う言葉はほぼは聞きなかったと思います。

 もっとも「量子」の概念自体は当然利用されていました。そのため、私の認識では、MRIなんかのあれを演算に利用するのかなぁくらいの感覚でした。

 まぁ「分かる」とは口が裂けても言えないですね、という訳で一からお勉強です。

 

2.感想

 所要時間:約10~20時間

 ターゲット:大学専門課程(情報処理の基本的なバックグラウンドがあるぐらい?)

 満足度:5/5

 感想:驚くほどの良著でした。全体的にコンピュータの歴史から丁寧に体系化がなされており、ある程度の基礎知識がある人間であれば追加の情報をほぼ入れる必要がなく、情報が網羅されているという印象です。これを自分とほぼ同世代の方が書かれているらしく、正直、アカデミアを辞めて正解だったなぁという気がしています。

 全体を通して、量子コンピュータ特有の部分がメインになっているので、量子に関する物理的な知識(量子力学等)よりは、コンピュータに関する知識(コンピュータ工学等)に寄った構成になっているという印象を持ちました。個人的には、量子コンピュータについて知りたかったので、このような構成で問題はありませんでした。ただ、逆に言えば、ここら辺の基礎知識について知りたいのであれば、量子力学等の基礎的な書籍に振り替える必要がありそうです。

 分量を見ても明らかなようにあくまでも総論的な立ち位置(基礎理論)の書籍になっています。したがって、個別の論点や応用については、詳細な記載はありませんので、別途フォローする必要があると思います。

 

3.まとめ

 さて、知人のひょっとした問い合わせから始まった「量子コンピュータ」ですが、予想以上に面白いですね。仕事につながるかどうかはともかく、基本書と応用で1、2冊くらいは追加で消化する予定です(既に1冊は購入済み)。

 ちなみに知財的な応用でそこまで従来の方法論と変わるところはなさそうです。強いて言えば、この分野は何処まで言っても「to Bの内部ロジック」の知財化になるので、変にテクニカルなことをせずに、ライセンス先やその後のビジネスを踏まえた形で整理していくというのが良さそうです。

 最後に、少し前に話題になったグーグルの論文を張っておきます。それでは。

www.nature.com