大学における特許収益の現状と山口大学の知財への取り組み
1.大学における特許収益
知財業界に身を置いていれば、一度は聞かれたことがある質問があります。それは、結局のところ「特許(知財)は儲かるのか?」という問題です。まぁ以前の記事でも多少触れていますが、ビジネスにとって知財活動は必要です。では、特許が儲かるかと言われれば、「どうだろうなぁ」というのが正直な解答かと思います。
一般の企業であれば、多くの場合、特許は事業防衛(市場における優位性を維持する)の目的で特許を取得するのですが、例えば、大学等においては、事情が若干異なります。大学等においては、自身が事業活動を行うことはありませんから、基本的にはライセンス等による収益が全てです。
そのため、特許の収益性を議論する上で、大学等の収益状況というのは結構いい研究材料になります。文科省のプロジェクト等を担当していた時はかなり把握していたのですが、最近フォローできていなかったので、少し調べてみることにしました。
2.文科省のデータ
実は、各大学の特許収入については、毎年文科省の調査の中で公表されています。
中でも目を引くのが特許収入の伸びです。例えば、平成24年の特許料等収入額が約15.6億円なのに対して、平成29年が約42.9億円とされています。こちらの調査では、正確な「コスト」は分かりませんから、大学が特許でどれだけの利益を上げているのかは明確には分かりません。しかし、特許保有件数という観点で考えても、平成24年の特許保有件数の合計が約19800件に対して、平成29年でも約42000程度ですから、収入額の伸びに対してコストがそこまで大幅に増加しているとも考えにくいでしょう。
近年の大学等における各種取り組みの成果なのは間違いないでしょう。正直、このデータは驚きました。実は平成25年に特許料等収入額が20億を超えたということは把握していたのですが、今はさらに倍ですからね。特許実務の肌感としても、大学や大学発ベンチャーの勢いを感じるのも頷けます。私が所属していた10年近く前の組織とは、今は、全く別の組織と言っても過言ではないのかもしれません。
3.山口大学の取り組み
今回調べている中で特に目立った動きが紹介されていた山口大学の事例を紹介します。なお、私自身は山口大学の関係者と直接面識はありませんので、ご紹介する情報のソースはあくまでもネット情報です(笑)。
こちらが山口大学知的財産センターのHPのようです。ぱっと見、充実してますね。特に現場の研究者に対する教育活動や分かりやすい成果のアピールなど他の大学も見習うことが多そうですね。また、2017年12月の日刊工業新聞によれば、大幅な赤字であった山口大学は、特許出願により獲得できた外部資金(競争的資金等)を間接経費として計上し、結果として黒字であるという判断がされたようです。
実際に、外部資金の調達にどれだけ貢献しているかはともかく、一定の貢献があるということに異論のある人は少ないでしょう。そのため、このような考え方は、他の大学は勿論、VC(ベンチャーキャピタル)から投資を受けるスタートアップ等においても、十分に妥当する手法でしょう。大学の知財については、そのうちもう少し深堀した内容の記事を書ければと思いますが、取り敢えず、本日はこのくらいで。