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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

書籍紹介:ガイドブック AI・データビジネスの契約実務(商事法務)

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1.はじめに

 例のごとく、久々のブログ更新です。もう少し更新の頻度を上げたいと思いつつ、在宅勤務が続くこの状況では、やはり本業優先という感じでしょうか。

 まぁ今回の内容に関しては、(予想通り)ボリュームがかなりあったので読むのに時間がかかってしまったという点もありました。なお、田村先生の『知財の理論』も既に読み終わっているのですが、まだまだ自分の思考がまとまっていない状況なので、取りあえずは保留しています。

 今回ご紹介する書籍は、

 ガイドブック AI・データビジネスの契約実務(商事法務) (著)齊藤友紀・内田誠・尾城亮輔・松下外

 こちらの書籍は経済産業省のAI・データ契約ガイドラインの4人が執筆した書籍ということで、かなり楽しみにしていました。夫々の執筆者から執筆状況や簡単な内容については耳に入ってきてはいたものの、やはり実際に本を手に取ってみると、また違った心境になります。さてはて、どのような内容にまとまっているのでしょうか。

2.感想

 所要時間:10時間~20時間程度

 ターゲット:データビジネスを扱う企業の弁護士(法務担当者)

 満足度:4/5

 感想:(予想通り)極めて実務的かつ、実践的なノウハウの塊と言い切ってしまって、良いでしょう。

 特に前半部(特に2章の秘密保持契約など)に関しては、知識を習得させるという目的ではなく、それにより議論が起こることを期待しているような、極めて高度でセンシティブな内容です。書籍というよりは、論文に近い内容のように思います。その意味では、例えば一人法務のような組織内で唯一の法律的な(契約上の)意思決定を行わなければならない立場の人にしてみれば、リスクヘッジや責任を含めた極めて実践的な対応を検討する上での示唆を与えてくれる可能性は極めて高そうです。

 一方で、後半部(特に6章のプライバシーポリシーなど)に関しては、比較的ベーシックな内容な記載となっています。この部分を勉強したいなら別の本を読めというメッセージでしょうか。上述のガイドラインもそうでしたが厚い本はやはり読みずらいですからね・・・。という訳で、どこまで本を薄くしたいという意図が反映されているかは分かりませんが、本文のみで180ページ程度と『比較的』読みやすい分量でした(ここは少し意外でした)。

 いずれにせよ、期待通りの良著であり、特にデータビジネスの契約担当者にはオススメできる内容でした。気になる方はぜひ手に取って見てください。

3.まとめ

 在宅勤務の中、時間がいつもよりあるはずなのですが、なぜこのような更新頻度なのか・・・。次回はもう少し早く更新するつもりでいます。

 さて、このような状況の中、7月下旬のセミナーに登壇させていただくことになりました。

内容はやはりAI絡みの話にはなりそうですが、基本的には『知財戦略』のような少しマクロ的なテーマにしようと考えています。普段権利化を扱っていると、どうしても出願や権利化のテーマになってしまうので、戦略レベルの話は久しぶりです。正直、7月下旬だと実際に実施できるかどうか、かなり微妙な気がしますが、せっかくの機会なので、何かしらの形では社会に公表しようと思っていますので、お楽しみに。それではまた。

『弁理士』と『コンサル』?

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1.はじめに

 さて、かなり久々のブログ更新です。

 今月は、昨今の新型コロナウイルスの問題もあり、ほとんど仕事がないものと思っていたのですが、前回のブログ更新後のあたりから急に忙しくなり、今に至ります。あくまでも私個人の考え方ですが、やはり経済的な影響を考えると、飲食店等に立ち寄る機会は敢えて増やしたいと考えているのですが、社会全体がこのような状況だと、中々難しいというのが正直なところであり、出歩く機会はかなり減ってしまいました。

 そんな中でも、流石に同業者(知財・法務業界)の方と会う機会というのはそれなりにあるのですが、同業者の方の話を聞いていて、一つ思うところがありました。

 それは『コンサル』という言葉についてです。本当の意味で経営に対するアドバイスをイメージしている方もいれば、出願の戦略や方針のアドバイスをイメージする方、発明発掘のようなものをイメージする方などもいそうです。

 知財業界におけるコンサルって何でしょう(そもそも知財に区切る意味もどれだけあるのかわかりませんが)。

2.コンサルとは何か

 少し調べてみましたが、やはり明確な定義は難しそうです。まぁ予想どおりです。

 昔あるコンサルティングファームの方とお会いした際に、コンサルの本質は『伴奏』することだという趣旨の話をしていたことがあります。極めて本質をついた発言のように思います。さらに言えば、これはコンサルの中でも最も大きな付加価値(コストも含めて)が伴奏、即ち『一緒に成果を出す』という部分にあるということなのでしょう。

 この『伴奏』して一緒に成果を出すということは極めてこんなんな作業です。最前線の課題は常に困難であり、対象者のモチベーションも様々だからです。特に、『知財的』な『課題』は、どうしても経営と遠いイメージがあり、実践のモチベーションが上がらないのも頷けます。

 ただ一方で、『伴奏』を前提としたスタイルには、高額な対価を伴うのも事実のように思います。例えば、士業の顧問料のようなスタイルで同じことをやろうとしたら一瞬で経営は破綻します。だからこそコンサルティングファームは、高額の成功報酬を前提として、相手も十分に選ぶという側面があるのは間違いありません。知財にはどのようなスタイルが合うのでしょうね。

3.まとめ

 はい、という訳で何の結論もありません。少し、初心に帰って中長期的に(知財)コンサルティングとの向き合い方について少し考えていこうかと思った次第です。

 知財領域のコンサルティングは、通常の経営(戦略)コンサルティングのような大型のファーム(近いとすれば某IP〇〇さんとか?)はほとんど存在せず、まだまだ方法論が確立されていないというのが現状です。この点、最近では特許庁を中心として、方法論やノウハウを積極的に公開する業界関係者が増えてきました。これは極めて良い傾向です。このようなノウハウの共有や方法論の確立は最終的には業界全体の底上げにつながりますし、夫々の企業の競争力を高めることにもつながります。

 変に企業側への情報発信を考えるよりも、ノウハウ(明細書の作成ではなく知財機能のサポートに向けた支援)の共有に向かったコミュニティーを作っても面白いかも。まぁいずれにせよ、夏ぐらいにはなにかしらの方向性を検討したいなぁ。それでは。

ソフトウェア中心の世界における知財屋の役割と価値

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1.はじめに

 先日より、田村善之先生の『知財の理論』(有斐閣)を読み始めました。いや、ボリュームが凄いですね。肝心の内容ですが、まずは冒頭から知財の正当化根拠とは(笑)。ツイッター等でも、何人かの方が放棄したと言っていたのも納得です。ネタとしては、かなりセンシティブな話題ではあるものの、やはり知財に関わっている者として考えなければならない問題の一つです。今年のサマーセミナー(毎年8月に北大で開催)でもここら辺の話を掘り下げるのかなと思いつつ、少し特許(特にソフトウェア関連発明)の要否論について、自分なりの考えをまとめておこうと思います。どこかのタイミングで書籍自体の雑感も公開しようとは思うのですが、取りあえず触りだけ。

 

2.ソフトウェア特許に関わる諸問題

 実は、ソフトウェア特許に限るものではありませんが、自社にとって知的財産権の取得のチャンスがあるということは、他社にとっても取得のチャンスがあるということを意味します。あまり意識していない方も多い気はしますが、権利の対象が広がるということは、逆に他社特許に対するサーチコストが増えるということを意味しています。サーチコストが多大になりすぎるという状況は、社会的にもビジネスプレイヤーにとっての負担は膨大でしょうし、やはりケアは必要なのでしょう。

 また、上述の書でも指摘されている通り、特にソフトウェア関連の特許について、パテント・ノーティス(何が特許の対象となり、何が高知技術の対象とされているのか、公衆に知らせる機能)の改善を目指すという方向性もやむを得ないように思います。

 一方で、ソフトウェア特許特有の問題点としては、過大な訴訟コスト(+リスク)という点があります。これは恐らく法の予想するところではないですし、然るべき権利を有する者が正当な権利を行使する上で、間接的なコストに起因して権利行使が妨げられると言うのはやはりフェアではない気がします。この辺りに関しては、やはり行政又は司法サイドからもう少しサポートがあっても良いように思います。

 

3.本来守るべき技術開発と投資コスト

 では、近年のソフトウェア開発において、実際に莫大な開発コストに対して、模倣が容易で保護を必要とする領域とはどこなのか。やはりユーザインターフェース(UI)のデザインや操作性の領域なのでしょう。特に重要な点はデザインにせよ、操作性にせよ、ユーザの趣向や操作の態様を調査・検討することによって、初めて生み出される価値や機能というものは確かに存在するということです。このような領域に関しては、明らかに投資コストの比重に対して模倣は容易であり、先行者利益の回収が難しくなるケースというのは間違いなく生まれてくるように思います。

 昨今の意匠法の改正を含めて、意匠法、特許法、不正競争防止法、著作権法を合わせてどのような保護領域をデザインするのかという点は、今後、もう少し議論されても良いのかもしれません。やはり特許権(又はそれに準ずる権利)と言う一つの選択肢は必要な気はするのですがどうでしょうね。

 

4.ソフトウェア特許のない世界での弁理士の役割

 以上の通り、ソフトウェア関連の特許が完全に認められなくなるということはないと思います。ただ、ソフトウェア分野の特許弁理士は、日本においてもアンチパテントへの舵取りが行われる可能性は常にあり得ると考えるべきなのでしょう。

 一方で、ビジネスモデルなどを含めて、特許庁が明確に保護の方向性を打ち出している以上、制度をうまく利用するという姿勢は必要でしょうし、過度に米国を追従する必要もないと思います。

 まぁ色々と書いていますが、要はソフトウェア中心(さらに言えば今後はデータ中心)の世界において、現状の制度としての知的財産制度と、本来法的な保護すべき『知的財産(価値)』にズレが生じてきているのは確かであろうということです(特にソフトウェア系の知財に関わっている人間は日々肌で感じているでしょう)。

 別に私自身そこまで大層なことを考えている訳ではないのですが、この領域に関わる実務家の端くれとして常に準備はしておくつもりです。まぁ、この辺りのネタはいずれ論文にまとめようとは思っているのですが、いつになるのやら。それではまた。

 

オフィスアワー(無料相談)の実施と雑感

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1.はじめに

 219日(水)に、新事務所初のオフィスアワー(無料相談時間)を実施しました。大方の予想通り、新規の方での参加の方はありませんでした。まぁそんなもんですね。

 ただ、時間外にちょっとした対応を行おうと思っていた知人に対して簡単なレクチャー等を行いました。そういう意味では、有意義な時間になったと思うし、大学のオフィスアワーも人が来るかどうかではなく、設置することに意味がある気がするので、月に一度程度は継続的に行っていこうかと思います。

 

2.オフィスアワーの課題と限界?

 オフィスアワーを実施してみて分かったことが一つあります。ずばり、個別的な話をするのが極めて難しいということ。よく考えたら当たり前でした。勿論、事前予約のような形式を採用すれば、問題は解決するのですが、気楽に来てほしいという意図もあるのであまり好ましくない気がします。

 一般論のようなネタを準備してもよい気はするのですが、そこに工数をかけては有料でセミナーを受けてくれる方に申し訳がありません。当面は来る方のニーズに合わせて、調整していくしかなさそうです。そういう意味では、同業者や他士業の方に来てもらうのも面白いのかも知れません。まぁ少しづつ良い形のイベントにしていきたいと思います。

 

3.終わりに

 さて、事務所の立ち上げから約2カ月が経過しました。(特許事務所ですからたかが知れているのですが)、お陰様で事務所の経営的にもある程度安定してきたため、ようやく次の展開が考えられそうです。まずは、9月頃を目途に人材の採用を開始する予定です。弁理士枠も採用したいとは思っているのですが、今後の売り上げ次第という感じになりそうです。

 もう一点、企業の知財機能底上げに向けた活動です(弊所の柱の一つになるはず?)。今後の成長と社内リソースの使用を条件に、割安で中長期的な顧問サービスを提供します。既にお付き合いいただいているクライアントさんとの兼ね合いもあるので、残り1社程度が限界だとは思いますが、興味がある方は、弊所HPよりお問い合わせいただければと思います。

*だらだらとブログを書いていると、ちょうどツイッターで税理士の方の無料相談に関する話題がちらほらと。やはり無料サービスは難しいですね。当面は公的な無料相談窓口に顔を出す予定はないのですが(頼まれれば考えますが)、公的なサービスであれば余計に面倒なことも増えそうです。悩ましいですね。

 

久々の川崎とオフィスアワーの告知

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1.はじめに

 さて、先日イベントこちらのイベントに参加してきました。

 

www.k-nic.jp

 

 ということで、VC絡みのイベントですね。一言で言えば、こちらのイベントが非常に良かった。勉強になったとか、別にそういうわけではないのですが、単純に話が面白く過充電されて帰ってきました。

 少し話は脱線しますが、前職で入札案件等に携わっていた関係もあり、数年前は2度/月程度は川崎に通っていたのですが、入札案件に関与しなくなっていこう3年ぶり?くらいの川崎でした。相変わらず勢いのある町という感じでいいですね。

 まぁイベント内容の詳細は省きますが、やはり感じたのは、VCのスタートアップとの関わり方が仕業の考え方と大きく異なっているという点です。難しいですね。

 一言で言えば、ボランティアでそこまでやるのかぁ、という話です(まぁVCさんと話すといつもそうなのですが)。インキュベイトファンドさんはシード期から深く付き合っていくスタイルということで、なおさらそう見えるというのもあるのかもしれません。最近では知財クラスタもスタートアップ支援に特化した方々も増えてきていますが、皆さん苦労されているだろうなぁという想像をいつもしています。

 

2.過充電は続く

 さて、少し話は変わります。先日、たまたま知人弁護士を通じて、某大学の大学発ベンチャーを紹介されて相談に乗ってきました。資金調達前、社長を含めてほとんどの社員が学生とくれば当然知財は手付かずです。(資金調達前だし)どこまで支援するべきかなぁと悩んでいると、先方の社長が「知財の勉強をするならばいい参考書とかありますか?」と一言。まぁこれは支援するしかないですよね、、、少し前倒しで支援を開始することにしました。

 

 念のために言っておくと、私の場合は、前職も現在も含めて大手企業のご依頼も普通に受けています。事務所の方針としてもスタートアップに特化した体制は特に引いてはいません。経営的に難しいというのもありますが、やはり高度な知財戦略(明細書の質も含めて)は大手企業でなければできない領域ですから、それはそれで面白く仕事をさせていただいています。やはりバランスが重要だと思っています。

 

3.終わりに

 という訳で、色々思うところがあり、弊所でも「オフィスアワー」のような機会を設けようと思っています。

 初回は219日(水)の18:00~20:00@弊所大塚オフィス

 という形で、月に1度程度開催していく予定です。飛び入り歓迎ですが、参加希望者がいない場合は、(私が)さぼる可能性もあるので、できればHPのお問い合わせページやツイッターでご連絡いただければ助かります。

お問い合わせ | 渡辺総合知的財産事務所

 基本的には、スタートアップや中小企業の知財の知識がほとんどない方を対象とするつもりですが、はじめはどうせ誰も来ないでしょうから実務や就職の相談や弁理士試験の相談等でもOKです。それではまた。

 

<オマケ>

 129日のセミナーですが、まだ申し込みが可能なようです。時間的に知財の話をそれほど深堀できないと思いますが、それ以外の技術的な話を聞くこともできるようですから、ぜひ、参加いただければと思います。

sbb.smktg.jp

 

 

第2回特許の鉄人 雑感

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1.はじめに

 <前置き>

 こちらのイベントに参加させて頂きました。

tokyocultureculture.com

 基本的には知財業界の身内イベントなので恐縮です。ただ、もしたまたま、このブログにたどり着いて少しでも「知財」に興味があるという方は、次回以降も似たようなイベントが開催されると思うので、是非参加してみると面白いと思います(特に他仕業や法律関係者の方)。

 

 相変わらず大盛況と言うことで、非常に楽しませて頂きました。マクスウェル国際特許事務所の加島先生個人のオーガナイズと言うことで、何よりもそれが凄い。ツイッターのみで交流があった方々とも数多くお会いすることもできましたし、参加して、全く後悔のないイベントでした。

 

2.クレイム作成バトル

 きっと多くの方が写真付きで課題の解説等をアップすると思うので、私の方では雑感に留めます。

 ちなみに私自身は、試合中自分でクレイムを作っていたので、出場者の状況はあまり見ることができませんでした。はじめはそんなつもりはなかったのですが、作り始めると止まらないというね。仕方ない。

 第1試合:もふもふしっぽ(Qoobo

 

qoobo.info

 実際の商品が題材ということでした。面白い。「日用品」の課題と言われてこれは想像できないだろうなぁというのが正直なところですが、このもふもふクッションかわいいから仕方ないですね。

 まずクレイム作成の前提から。25分という時間は極めて短い設定です。設定している料金との兼ね合いではありますが、私の場合は、概ね半日程度を見込んでスケジュールを組んでいます。第1試合の課題は特に難しい。クレイム作成自体が難しいというよりは、発明の抽出が難しいので、発明内容の検討とヒアリングに大きな時間がとられるイメージです。当然、出場者の方々はそのようなことはできませんがw

 さて、せっかくなので試合中20分くらい検討をしていた結果を少しお話します。ツイッターで言及するのも野暮なので、一度、ツイートを削除しました(「いいね」等を頂いていた方はすいません)。

 結論から言えば、この発明はロボットではなくクッションとして捉えるべきだったのではないかというのが私の見解です。つまり、中央部のクッション部分を確保するために、端部の可動部分は一定の領域に限られており、センサの搭載されているセンサ部も一部分のみに限られているというところを掘り下げてクレイムにしたかったかなぁというのが何となくの見解です。もう少しヒアリングすればセンサの位置や種類にも工夫はありそうだし、特許を出しておいてもよかったのではないかなぁという気はします。まぁ商品は、魅力的だし、買おうか悩み中です(しかしこれ以上家にぬいぐるみを増やすのは超危険)。

 

 第2試合:にゃん宅配便

 第1試合と異なり、まあ書かなければいけない分量が多いという意味で、やはり難問。それに加えて、アマゾンの先行技術もそれなりに近しくて悩ましい。まぁ初めの想定は量のポイントだけで設定したけど、途中でアマゾン見つかっちゃって、難易度上がってしまったとかいうオチなのかなぁとか邪推をしていますがどうかな。

 まぁ試合的には位置情報の話とクレイム構成の対比というところで色がついたように見えましたが、お二人とも時間があれば同じ結論(両方をいいとこどり)にたどり着いたとは思うので、短時間の状況でどういう思考を優先するのかというところが見ものだったのかもしれません。ちなみに私は木本先生に投票したのですが、審査員票が割れたように本当に接戦でしたね。試合としては面白かったのかな、逆に。

 

3.まとめ

 会場でご挨拶させていただいた方々、イベントの関係者の方々、本当にお疲れ様でした。大変楽しませて頂きました。このような知財の裾野を広げる活動は、少しづつでも広げていきたいですね。それではまた。

スタートアップの知財支援における傾向と対策

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1.はじめに

  今回は、久しぶりにスタートアップの知財について触れたいと思います。今までのブログでも多少触れている通り、私は、前職においてスタートアップや中小企業の知財戦略や特許出願を専門的に支援する部署に在籍していました。そのため、今でもやはりスタートアップや中小企業の方との繋がりが比較的多いです。

 ここ数年、特許庁をはじめスタートアップの知財活動を支援するための取り組みが非常に増えている状況です。このようなスタートアップ知財ブームを何とも言えない気分で眺めつつ、とは言えある程度ノウハウも蓄積していますので、少し自分なりに整理してみようという考えに至った次第です。

 とは言えスタートアップ知財と言っても、問題は多種多様です。資金力の問題や組織体系など考え始めればきりがないでしょう。そこで、今回は、いわゆる「知的財産分野の知識や経験(ノウハウ)」が少ない組織について考えてみたいと思います。その意味では、例えば、企業規模は大きくても知財に慣れていないような企業(例えば、多くの中小企業や商社)なども状況は同じと言ってしまっても問題はないでしょう。

 

2.知財ノウハウの正体

 「知財ノウハウ」がないとは結局どのようなものなのか。もっと言えば、「知財ノウハウ」がない組織とは何が問題になるのかという点です。私は、この点についての本質的な問題は、「組織的な意思決定能力の欠如」に他ならないと考えています。

 組織的な意思決定能力の欠如といっても個々の組織の状況は違います。例えば、「知財的な意思決定を行うことができる個人が存在していない組織」、「知財的な意思決定をできる個人は存在しているものの組織としてのコンセンサスを取ることが困難な組織」の2つのフェイズに分類できると考えています。

 まず、「知財的な意思決定ができる個人はいるものの組織としてのコンセンサスを取るのが困難な組織」について考えてみましょう。典型的には、組織内に有資格者(若しくはそれに準ずる人材)が少なくとも一人は存在するものの、社内全体に知財マインドは薄く、組織全体としては活動がうまく回っていないという状況を想定しています。このような組織については、まだまだ数は少ないものの優秀な方々が各組織で孤軍奮闘されているこのブログでは細かい言及は避けることにします。まぁいずれにせよ、このフェイズの組織では、意思決定の問題が致命的な問題になることは少ないと思います。

 問題は、「知財的な意思決定を行うことができる個人が存在していない組織」についてです。これは、組織内に知財的な知識を有する人材がほとんどおらず、知財(リーガル)的なリスクヘッジに対する判断が困難、あるいは多くの時間を費やす必要があるという状況にある組織です。先ほどとのバランスで考えれば、組織内に有資格者(若しくはそれに準ずる人材)が一人でもいない状況を想定しています。

 このような状況では、組織内の人間といわゆる外部専門家とのコミュニケーションエラーが往々にして起こることになります。

 例えば、明細書の記載にせよ、出願の方針にせよ、一般的な法律判断にせよ、「完璧」はあり得ません。リスクを伴う意思決定というものは常に生じることになります。このような組織において知財活動を行う場合、経営者からのトップダウンの支持がなければ、まず進むことはありません。よく考えれば当たり前ですね。相当高度な専門知識を持っていたとしても、発言力の少ないプレイヤーという状況で組織の意思決定を行う(経営者を説得する)ことは非常に困難です。

 では問題は、このような組織の経営者がどの程度のリスクを理解した上で、意思決定を行うことができるかという点です。勿論、例外というものは存在します。例えば、一定程度の知財の知見を有している場合や経営者が極めて優秀な場合です。このような例外的な経営者であれば、外部専門家からの簡単な説明のみで十分合理的な意思決定を行うことができる場合もあります。

 しかし、現実的にはそのような経営者は限られています。また、経営者は非常に多忙ですからそもそも知財活動に関与する時間が十分に確保できないこともあるでしょう。

 このような状況では、対応に当たる外部専門家はその意思決定(リスク判断)の一部を負担しなければならない状況が生じます。そして、この「形の見えないリスク負担」こそ、知財ノウハウがない組織と外部専門家が付き合う場合のやりにくさの最も本質的な原因になると考えています。

 当たり前のことだが、誠実に説明を行えば行うほど莫大な時間と労力が掛かります。また逆に説明を省略すれば、リスク判断の一部を負担することになりますから非常にリスキーです。私の経験上うまくいくのは、経営者が特定の外部専門家(例えば、私)を絶対的に信頼してくれているケースや経営者が知財は重要であり外部専門家の判断を尊重して知財活動を進めたいという明確な意思を示しているようなケースでしょうか。勿論、いずれのケースも外部専門家が誠実に標準以上の仕事を行うということが前提になりますが、現実的な落としどころはこの辺りになるのでしょう。

 つまり、外部専門家の立場として正直に言えば、スタートアップ知財の支援とは、誠実に向き合おうとすればするほど割に合わない難儀なタスクと言えるのです。昔某著名な先生に、「君たち(〇〇事務所)は、スタートアップを支援すること自体も凄いが、それを経営として成り立たせているのが本当にすごい」という趣旨の言葉を頂いたことがあります。言い換えれば、一定以上の外部専門家(弁理士)であれば、スキル的にはある程度対応は可能であるものの、採算を含めて継続的に支援を行うことが極めて難しいのです。

3.解決策の検討

 さて、このブログは別に愚痴を言うブログではありません。解決策を考えましょう。

 (1)まず一つは、経営者(組織)と外部専門家の双方が互いの信頼関係が最も重要であることを認識することなのだと思います。信頼関係があれば、意思決定を効率的に行うことができますし、問題が生じることも少ないでしょう。その意味では、スタートップ側の立場としては、結局のところ、相性のいい外部専門家と付き合うということが最優先すべき事項なのかもしれません。

 (2)もう一つは、組織内に知財的な意思決定を行う(又はそれに準ずるアドバイス)を行う人間を確保するということです。当たり前ですが、上述の有資格者を組織内に雇い入れてしまうというのが最も確実な方法です。とは言えそれも難しいという前提であれば、例えば、最近になって少しづつ増え始めていますがCIPOアドバイザーのような形で組織の利益を優先した意思決定を行ってくれる人材を確保したり、また、知財に詳しい友人にアドバイスをもらうというのも効果的だと思います。

 ただし注意しなければいけないのは、ここで言うアドバイザーは、あくまでも外部専門家とのコミュニケーションを円滑にするための存在だということです。アドバイザーが、単に組織の利益のみを主張したり、自身が組織から評価されることだけを考えるようではあまり意味がありません。

4.まとめ

 さて、久々に本気?を出してみましたが如何だったでしょうか。

 内容自体は、そこまで新しいものではありませんし、近いことを考えていた方は非常に多いように思います。スタートアップを中心に活躍されている弁理士の方々のアウトプットを拝見しても、割と似たようなことを考えている方はいそうですし、やはり前線にいる方々は似たような試行錯誤をしているんだろうなぁというのが正直な感想です。

 念のために言っておくと、別に悲観的なことを書いている訳ではないですし、スタートアップ界隈に関わるのを辞めたわけでもありません。単にスタートアップの支援には、相応の覚悟がいるというだけの話です。上の文章でも解決に向けた具体的な方法論までは言及していません。まだまだ、試行錯誤の繰り返しです。今後もブラッシュアップを続けていきますので、興味がある方はお付き合いいただければ幸いです。それではまた。