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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

『知財業界での夢と希望』~知財業界のリアル~

1.はじめに

 今年も『弁理士の日記念ブログ企画2021』の季節がやってきました。本ブログの更新頻度は絶望的な状況ですが、せっかくの機会ですので参加します。

 さて、今年のテーマは、『知財業界での夢と希望』です。面白いテーマですね。私自身はあまり夢や希望を意識しながら生きるというタイプではないのですが、少し考えてみようと思います。

 

*本来、知財業界は、当然、企業の担当者やコンサル系事業者などかなり広い概念が含まれると思いますが、今回は弁理士の日の記念イベントということもあるので、士業としての弁理士(特許事務所)を想定して記載しています。

 

2.~知財業界に入るまで~

 私は、大学院の博士課程後期(情報⇒医学・神経科学)をD2後期~D3前半のタイミングで退学し、その後、専業の受験期間を経て、知財業界へと入りました。大学受験等で浪人をしていることなどもあり、弁理士試験の合格が31歳ぐらいだったと思います。その後、特許事務所での特許実務を経て、2019年に独立し、現在に至ります。

 なお、私が専業で受験を行っていた理由は、実は資格がない状態で業界に入るという認識がなかったからです(単に働きたくない)。特許技術者の存在を知っていれば、そのまま就職していたかというと、そんなこともない気はしますが、全ての人に無職での受験を勧める必要もないでしょう。

 ただ、アカデミアから離れて何もしない期間を置いたのは正解でした。受験期間は、アカデミアの感覚を知財業界の感覚に頭を切り替える良い期間だったと思います。

 

 (知財業界への期待)

 さて、私が博士課程後期に在籍していた当時の神経科学業界といえば、米国のトップジャーナルを持つ研究者が翌年に契約を解除される人がいたり、月20万円程度の給与で生活している人がいたりと、今考えるとかなりひどい状況でした。流石に、このような労働環境に付き合う気にはなれませんでした。

 同時に、少なくともこのような労働環境を構造から変えなければ、日本の科学技術は確実に衰退するだろうとも思いました。

 ちなみに、当時同僚とする話とすれば、〇〇さんが高いIFの論文にアクセプトされた、△△さんが任期無しのポストに入ったというような話ぐらいしかした記憶がありません(当時国研に所属していたという事情もありました)。末期でしたねw

 そのため、私が知財に期待していたのは、自らの労働環境を改善し、かつ可能であれば知財を通してアカデミアの労働環境の改善に繋げることでした。『知財』にはそれだけの可能性を感じていました。

 

3.~現在に至るまで~

 (実際の知財業界の状況は?)

 やはり、弁理士の労働環境はやはり恵まれています。これは特許事務所の弁理士(勤務・経営)に限らず、審査官や企業知財部を含め、いずれも費用対効果が高い恵まれた労働環境だと思います。少なくとも私の知るアカデミアと比べればかなり良いのは確かです。

 そして、自分はアカデミアの労働環境に何か貢献できたのか。これは良くわかりません。

 10年前と比べるとアカデミアの労働環境も大分変りました。特にCS(コンピュータサイエンス)分野では、博士号取得者が生活に困るような話はほとんど聞きません。一方で、私のいた神経科学分野は、(ある程度は改善しているものの)今でも状況はあまり変わらないと聞いています。しかし、神経科学分野を含めて、変化があるとすれば、大学発ベンチャーや技術系のスタートアップと言う話題が目立つようになりました。

 この流れは、アカデミアの労働環境や日本の科学技術の発展にポジティブに作用する好ましい流れです。この辺りの企業にどのように知財・法務の基盤を浸透させていくのか、まだまだ課題は山積みです。

 余談ですが、日本と欧米の致命的な差の一つに研究の周辺人材の差があります。知財を含めた周辺人材の強化育成は、日本が世界で戦うための至上命題の一つだと思っています。

 

4.~これからの目標~

 一つは、やはり事務所の組織体制の強化する事です。今の事務所(渡辺総合知的財産事務所)は、丁寧な仕事を提供したいという考えから、あまり大きな組織にはしないつもりでした。この考え方は、今も基本的には同様なのですが、やはり現実的に受けられる仕事のキャパシティや対外的な影響力に限界を感じることが増えてきました。

 まぁやりたい事が多いんですよね。現在は1人弁理士(従業員3名)の体制でやっているのですが、採用を増やし、ある程度の組織体制を構築していく予定です。

 

 もう一つは、楽しめる仕事をするということです。弁理士の仕事の良い点の一つは、仕事の内容や性質をある程度自由に選択できるという点です。

 要は、弁理士(知財)の仕事って割と面白いし、自由なんですよね。単純に発明者の拘りを聞くことも面白いですし、未成熟な業界ですから面白いことが山ほど残っています。

 その時々の感覚を大事にしながら面白いことを追求していきたいです。ただ、そうは言っても私は特許事務所の弁理士です。『知財を通してクライアントの企業価値の向上に貢献する』と言う地道な活動も大事にしていきたいと思っています。

 

 さて、本日のブログはこれで終了となります。『弁理士の日記念ブログ企画2021』は、他にも多くのブログが参加しています。知財業界に興味がある方は是非読んでみてください。なお、質問があればツイッターやコメント等でご連絡いただければ対応します。それでは、また次回。

 

benrishikoza.com