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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

特許事務所の選び方(大手特許事務所vs中小特許事務所)

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1.はじめに

 

 今日のテーマは、「知財に慣れていない担当者がどのように特許事務所を選べば良いか」です。ずいぶん前からセミナーでやりたいと思っていたネタだったのですが、声もかからないし、あまりまとまった時間も取れなかったので、こちらで公開することにします。文章だけだと、わかりにくいとは思うのですが、まぁそこはご愛嬌と言うことで。

 余談ですが、最近、プロフィール用の写真を撮ろうと思って探しているのですが、本当にどこを選べば良いのか分からないですね。特許事務所を選ぶのってもっと大変なんだろうな、とふと思いました。

 

2.身も蓋もない話

 

 初めに身も蓋もないことを言いましょう。士業なんてものはコネクションが一番です。理由は、いくつかあります。士業の場合、基本的にサービスの大半は「知識の教授」です。したがってコミュニケーションが不可欠であり、いわゆる「相性」が合う合わないが非常に重要になります。その意味で、相性の良い弁理士の知り合い(又は知り合いの知り合い)がいればその方を大事にするというのは極めて重要なことだと思います。

 まぁとは言え、それでは話が進みませんから、知り合いがいなかったという前提で話を進めます。

 

3.大手特許事務所と中小特許事務所

 

 ではまずは、特許事務所について簡単に説明します。以前のブログでも、特許事務所とは、特許出願を始めとする知的財産活動に必要となる様々なサービスを提供し、対価を得る(収益を上げる)組織として紹介しています。

 この特許事務所ですが、多くの弁理士が所属する大手特許事務所から、一人の弁理士のみで運営する小規模な特許事務所(以下、「一人事務所」と呼ぶ)まで様々です。割と情報がまとまっていそうなHPを参照しつつ、説明します。

 

patentfirm.tokyo

 

 こちらも以前ブログで紹介していますが、特許事務所の大半は、実は一人事務所というのが実態です(私ももうすぐそうなります)。他方、このHPによれば弁理士40人以上の大手特許事務所は10程度しかないようです。

 

*私の古巣も弁理士は50人以上在籍していましたが、こちらのHPには載っていませんし、結構、抜け漏れがあるのかも知れません。

 

 今日は取り敢えず、大手特許事務所と1人事務所を始めとする中小特許事務所のメリット・デメリットを考えてみましょう。

 

 <大手特許事務所>

 さて、大手事務所の良いところは、色々な手間を省けるところです。別のブログで詳細については記載しますが、弁理士の特徴の一つは他の士業と比較して、個々の得意領域がかなり狭いということがあります。例えば、ある弁理士は「特許、特にバイオが専門である」というような形で、法域や技術分野に得意不得意があるのが一般的です。また、大手特許事務所の多くは、事務部門も充実していますから、法律手続きとして安定した事務処理が期待できます。

 この点、大手事務所では、幅広い人材を揃えていますから、広範囲な領域をカバーすることができます。また、このような特徴を含めて、大手特許事務所は、事務や特許技術者を含めたチームで仕事を受けるため、良くも悪くも一定水準以上のアウトプットを出してくれることが期待できます。つまり端的に言えば、先程のHPの上位10事務所のうち何れかに相談して、それなりの金額を払えば、最低限のアウトプットを出してくれる可能性が高いと言うことです。これは知識のない依頼者からすれば圧倒的なメリットになります。

 他方、大手特許事務所の(特に人気のある)弁理士は、同時に多数の案件を抱えることも多く、基本的に「超多忙」です。質問をしても素っ気ない回答が返ってきたり、スケジュールの調整ができなかったりと、いうような不自由さがあるかもしれません。言ってしまえば、担当弁理士とのコミュニケーション上の問題が生じやすい環境と言えます。また、大手特許事務所の場合は、(事務部門が充実していることとのトレードオフですが)、料金や納期などに融通が利かず全体的に杓子定規の対応の事務所が多いかもしれません。そのようなこともあり、大手特許事務所は一般的に料金は高い設定の場合が多いと思います(間接経費も高いですしね)。

 

 <中小特許事務所>

 中小特許事務所の最大の問題点は、各事務所が千差万別であり、どの事務所を選べばよいのか、素人には極めて判断がつきずらいという点です。念のために言うと、中小特許事務所にも優秀な先生は沢山おり、サービスのクオリティーも大手特許事務所以上の事務所もいくらでもあります。その意味では、自社に最適な特許事務所が見つかれば、料金も比較的安い場合も多いですし、大手特許事務所以上に満足することができる可能性は十分にあります。

 

4.結論

 

 このような事情から、

 (1)まずはコネクションがあるのであれば知り合いの弁理士に相談してみる

 それが難しいようであれば、

 (2)取り敢えず大手特許事務所に相談してみる

 不都合を感じたり、慣れてきて本格的に知財活動を行おうと思ったら、

 (3)中小特許事務所を利用して見る

 というような使い方が良いような気がします。自分の宣伝にならないようにできる限り客観的に検討して見たつもりなのですが、どうでしょうね。異論反論ありそうなところですが、特許事務所の選び方に迷っている担当者の方の助けになれば幸いです。