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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

『コロナ禍収束後の知財業界』の変化と未来

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1.はじめに

 さて、前回のブログ更新はいつのことか、本業の方も相変わらず忙しく、このような機会でもなければさらにブログの更新は遅れていたことでしょう。

 という訳で今回は『弁理士の日記念ブログ企画2020』への参加投稿としてコロナ禍収束後の知財業界について、思うところを記載したいと思います。まぁ、過去に医学分野いた人間として思うところがないわけでもないのですが、あくまでも経済的な視点(特に知財業界に関係する範囲)で言及します。

 

2.新型コロナウイルス問題の特質

 (1)『オフィスの価値』の変動

 知財業界に最もインパクトを与えるのは、何だかんだ言ってもこの点ではないでしょうか。特に特許事務所の中には、売り上げに対する家賃の比率が極端に高い事務所も少なからず存在しますから、そのような状況がコロナ禍収束後にどのように変化するのか。従業員への還元率(給与)などにも関係してくるかもしれませんし、関係する様々な『相場』が変わるかもしれません。

 かく言う私自身も、今年中にオフィスの移転(拡張)を検討していたのですが、一度オフィスの移転(拡張)を白紙に戻しました。正直、この状況でオフィスの移転を行うという選択はあまり取りにくいですね。相場も大分変っていくでしょうし。

 ただ、一つ考えなければいけないのが、多くの方が述べているように、チーム内のコミュニケーションを図るという意味において、オフィス(オフライン)の場所を持つ価値は決して低くないという点です。この点については、私自身も強く実感しているところであり、言語化できないメリットをないものとして切り捨てるほど、人類は進化してはいないのです。アカデミア時代には毎日のように実感させられたものです。

 まぁ強いていうのであれば、オンラインのコミュニケーションというのは常に積極的であることが前提であるのに対して、オフラインのコミュニケーションは受動的であっても成立します。この違いは、多くの企業にとって小さくない違いを生むはずです。

 問題はオフラインの価値を認めつつ、どれだけのコストをオフィス(家賃)に投資するのかという一点です。下の資料などを見ても、東京の特許事務所の7割近くが千代田区、中央区、港区の3区に集中しているということで、少なくともこの状況はある程度解消されるのではないでしょうか。オフィス移転や規模の縮小を検討する特許事務所はある程度出てくるはずです(業界自体がそれほど景気の良いわけではないですしね)。

 

 (2)リモートワークへの対応と事務所システムのIT

 オフィスの価値と近しい問題ですが、働き方・リモートワークの普及は大きな変化です。ご存じの通り知財業界(特に明細書作成業務)は、場所を選ばず(時間も選ばず・・・)作業をすることが可能です。何かのきっかけがあれば、リモートワークの流れが進むのは当たり前と言えば当たり前です。今後は、仮に事務所は東京にあったとしても、居住地は地方というような働き方も珍しくはなくなるかもしれませんね。

 まぁしょうもない一般論だけを書いても意味はないでしょうから、少し実情にも触れましょう。

 実は最近、かなり歴史の長い大手の特許事務所でもリモートワークが導入され始めているという話を聞くようになりました。正直、驚きました。元々、世の流れに敏感な若い特許事務所であれば柔軟な対応も想定の範囲内ではあるのですが、やはり大手ではなかなか難しいのではないかという印象がありました。コロナ禍収束後には大きな業界のゲームチェンジが起こるかもしれません。『今時WEB会議での面談に対応できないのですか?』というような指摘を受けるのが当たり前になるかもしれませんね。

 

 (3)漠然とした不安と不況への対策

 コロナ禍収束後の問題の中で最も危惧している問題の一つです。現状知財業界には大きな影響はないように思いますが、飲食業や製造業では、深刻な経済的影響が予想されます。残念ながら廃業に追い込まれる企業なども少なくないかもしれません。私、個人としてもできる限り応援していきたいと考えており、できる限りのことは行いたいと考えています。

 しかしこのような状況の中で、『いざという時にきちんと資金をため込んでいなかったのが悪い』、『不況に備えるのが経営者として当然の義務だ』というような指摘がなされることがあります。要はキャッシュを持っていなかったのが悪いという論調です。このような指摘自体に間違いはないでしょうし、私自身に経営責任を問われたなら同じ指摘をされることも否定するつもりはありません。

 ただ、やはり経済の基本思想は『信用』です。お金は使わなければ回りません。企業の内部留保の比率が高まることは、少なくとも日本経済全体として良い方向には進まないはずです。

 その上で重要なことは、政府の事業支援政策であり、何よりもそのような支援政策があるから『ある程度リスクをとっても大丈夫だという安心感』を事業者に与えることだと考えています。

 経験上、今回の各種支援の内容や実行までのスピードは(良い方向で)極めて異例のものです。正直、関係者は相当大変だったと思います。もちろん、これは保障として十分かどうか、諸外国と比較してどうなのか、という話ではなく過去のその他の支援政策と比較してという話です。

 ただ、やはり例のごとく、周知の問題なのでしょう。知り合いの経営者などと話しても効果的に支援の内容が周知され、十分な安心感を与えているのか、というとほとんど効果は出ていないように思います。ここから数カ月で政府(行政)に求められるミッションと言えるのかもしれません。その点がうまくケアされれば知財業界への波及は最小限に抑えることができるのではないかと思います。

 

3.まとめ

 『コロナ禍収束後の知財業界』ということで簡単にまとめてみました。如何だったでしょうか。経営者としての経験がそこまであるわけでもなく、経済にそれほど詳しいわけでもなく、中々、困難なテーマでした。正直、コロナウイルスのディテクトする原理を説明する方がまだ書きやすいかも知れない。

 ただ一点、不幸中の幸いだったのは、昨年の12月に特許事務所を開業したことでした。元々、新しい事務所では請求書や情報管理などを全て電子化し、コミュニケーションツールなども最先端のものを揃えるつもりでいたため、ちょうど色々調べて導入したタイミングで、3月~4月を迎えることになりました。要するに、多くの皆さんより少し先に特許事務所の本質的な機能を見直す機会を得ていたわけです。

 さて、本ブログ執筆時(20206月末)の状況でも、コロナ禍の余波は続いており、まだまだ予断を許さない状況です。皆さんも、まずは自身の健康を大切にして、無理をせずに頑張っていきましょう。

 

下記は、今回のブログ企画のHPです。他にもいろいろな方が参加しているようですので、興味がある方は他の参加者の方のブログも是非ご覧ください。

 

benrishikoza.com