このエントリーをはてなブックマークに追加

一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

ゲーム(e-sports)事業化への道

 

f:id:crysade:20191008122126j:plain


1.はじめに

 

 昔、昔、AOE(Age of Empires)というゲームがありました。当時、IRCというチャットソフトを使って、10~20代の熱狂的なゲーマー達は、日々しのぎを削ってお互いの腕を磨いていました。そんな中、当時、ハンドルネーム「Halen」という10代の若者は日本代表として世界大会を勝ち抜き(結果的に二連覇)、多額の賞金を獲得しました。まだ、「プロゲーマー」という言葉がほとんどなかった時代の話です。

*念のため、私は別に「Halen」ではなく、彼と同年代の凡庸なプレイヤーです。

 

 はい、という訳で今日から少しづつゲームネタを入れていきたいと思います。上述の通り、私は元AOE(AOC)プレイヤーの端くれでした。それでもそれなりのリソースをかけてプレイしてきたこともあり、当時の仲間の中には、いまだにつながりのある人もいたりします。中々馬鹿になりませんね。プレイヤーとしてのレベルはともかく、少なくとも「ゲームを生活の糧にする」、「ゲームを事業として成立させる」という点については、結構色々と考えてきたので、その観点で少し話をしようかと思います。

*ゲーム以外にもストリートダンス(ハウスダンス)を続けているので、ダンスの事業化(職業化)という観点も少し入っています。

 

2.プロゲーマーってどんな人たち?

 

 そもそもゲームで金を稼ぐということがイメージできない人のために、基本的なプロゲーマーの収入源を少し説明します。

 (1)関係会社の社員

  典型的には、ゲーム雑誌を取り扱う社員やゲーム会社の社員等です。例えば、「高橋名人」なんかが有名でしょうか。現在の感覚で言えば、「プロ」とは言えないでしょうが、今でも大会上位層の結構の割合がこのタイプだと思います。やはり生活が安定します。また、会社によっては、大会への参加費用や練習に割く時間を考慮した対応をしてくれる場合も増えてきているようです。

  ちなみに、上述の「Halen」氏も、(現在も所属しているかは知りませんが)4Gammerに就職したようでした。当時は、完全なプロプレイヤーは相当なリスクですからね。格闘ゲームであれば、当時でもそれなりの仕組みが整っていたのに対して、AOEのようなRTS(Real Time Strategy)ではまだまだ先行きが不安定ということもあったと思います。

 (2)スポンサー契約を行った個人

  本来的な意味でのプロゲーマーは、こちらです。完全に個人としてスポンサー契約をして活動する選手もいれば、例えば、マネージメント会社に所属して活動をするような選手もいます。また、最近では、企業やチームとしてリスクヘッジを行い、選手には毎月固定のサラリーが支払われるようなケースも大分増えてきました。

 

3.近年のゲームを取り巻く環境の変化

 

 私がAOEをプレイしていた当初(約20年前)と比較して、ゲーム(e-sports)を取り巻く環境は大きく変わりました。

 (1)社会的知名度の増加

  これにより、スポンサー参加企業が圧倒的に増えました。最近では、LOL(リーグオブレジェンド)やシャドーバース(収益の分配方式については未確認)のように参加チームを固定してリーグ戦を行うようなモデル(戦績に応じて分配金が支払われる)も増えてきています。このようなスタイルは、通常のプロスポーツの成功例に習い今後も増えていくのは間違いないでしょう。

 (2)Youtubeの浸透

  別にYoutubeに限った話でもありませんが、動画配信を行いそれにより収益を上げる枠組みは、従来は全くないものでした。これは、非常に大きな変化です。大会賞金等とは別に、選手個人が個別の情報発信チャンネルを持ち、さらにそこから収益を得ることができるという意味において、選手の新たな収益源となり得ます。

  また、例えば、ソーシャルゲームやMMOなど競技性の低いゲームであっても収益の可能性を開いたという意味においても、非常に大きい変化だと思います。

 (3)特に若い世代への人気(社会的地位の向上)

  今年もTGS(東京ゲームショウ)に視察(遊び)に行ったわけですが、近年、明らかな変化があります。それは、専門学校や大学の参加数の増加です。勿論、普通にゲームを作るという観点の大学がまだまだ多いですが、プレイヤーの育成を掲げる学校が増えてきているのは確かです。これは、将来的な競技人口を増やすという意味でも有効ですが、引退選手の生活の糧を増やすという意味でも有効です。e-sportsにおいても、引退後の選手のセカンドキャリアの問題は当然生じる話ですから講師になることで生活を安定させることができれば、だいぶ違いますね。今後は、例えば、個人トレーナーとか様々なスタイルが出てくると思います。

 

4.ゲームの特性と事業化への方向性

 

 このように長い年月をかけて、事業化に向けた下準備がやっと整いつつある状況です。しかしe-sportsには、通常のスポーツ等と決定的に異なる点があります。それが、タイトル毎に市場が細分化しており、また新規タイトルが出るごとに新たなタイトルでプレイしなければならないという点です。つまり、通常のスポーツのように固定されたルールの下で長い期間共通してプレイするという環境ではないんですね。また、スポンサーのつき方によって、業界の体制や環境が大きく変わってしまうというような問題もあります。これはプレイヤー側にとっても勿論問題なのですが、事業化(収益化)という観点でも大きな問題となり得ます。

 そこで、e-sportsのタイトルを少しマクロ的な観点で捉えてみたいと思います。例えば、ゲーム(特にe-sportsタイトル)を捉える際に、「技能的要素が強いか、技術的要素が強いか」、「結果の偶然性が高いか、低いか」という二軸で捉えてみるのはどうでしょうか。分かる訳ないですね。詳しく説明します。

 

 (1)技能的要素が強いか、技術的要素が強いか

  一応、一般的な技術と技能の言葉の意味合いで考えているのですが、簡単に言えば、技術は具体的な手段であり言語化や文章化することで比較的容易に伝えることができるものです。

  例えば、カードゲーム等で戦略を練ったり、デッキを構築したりという理論や方法論は、初めてそれを開発する人間にとっては膨大な労力がかかるものの、一度構築された戦略やデッキ編成を容易に伝達することができます。

  他方、技能とは、繰り返し実行することにより経験的に身につくもので、他人への伝達が極めて難しいものです。

  例えば、格闘ゲーム等においても、当然、方法論や戦術論は存在すると思うのですが、そもそも実際に特定のタイミングでミスをせずにコンボを決めたり、コンマミリ秒の単位で正確に操作を行うというようなスキルは、反復練習以外に身に着ける術はありません

  このような違いは、新規プレイヤーが参入するモチベーションや新規参入したプレイヤーが上位プレイヤーに何を望むのかといった点に大きな影響を与えると思います。

 (2)偶然性が高いか、低いか

  これは競技自体のランダム性が高いか低いかという観点です。

  例えば、カードゲームであれば、デッキ構築によりある程度調整はできるにせよ、山札からのドローは基本的に確率論の世界です。そのため、どんな上位プレイヤーであっても、100%の確率で勝てるという話ではなく、あくまでも長期的な勝率の差がプレイヤースキルの差を反映させることになります。その意味では、例えば、麻雀等の方がイメージしやすいでしょうか。

  一方で、例えば、私のプレイしていたRTSにおいては、長期的な序列の入れ替わりはあるにせよ、その時点における結果は、何度対戦を行ってもそれほど大きく変わりません。要は番狂わせというものが非常に起きにくいというイメージです。

  私は、FPSをあまりプレイしないのですが、ゲームの性質を考えると、FPSもこのような傾向は強いのではないでしょうか。実力通りに結果が出るというと一見よさそうにも思うかもしれませんが、番狂わせの少ないゲームというのは見ていてあまり面白いものではありません。結果が初めから分かってしまうのですから。

 

  まとめるとこのような感じでしょうか。正直、分類分け自体にはあまり意味がないのですが、事業化に向けた戦略を考えていたら体系化できそうだったのでまとめてみました。なお、格闘ゲームについて違和感がある人がいるかもしれませんが、起き上がりからの三択に対して、うまくコンボ決めれば逃げ切れるというような感じで、素人が玄人に勝てることはまずありませんが、上位層同士の対戦では、ある程度結果が偶然性で変わるという印象があります。これはゲーム設計上敢えてこのようにしているのでしょうし(タイトルにより差はあるが)、このような偶然性があるからこそ、格闘ゲームは早くからe-sportsとして習熟したのではないかと思います。まあ格闘ゲームはほとんどやらないので、間違っていたらすいません。

 

  さて、ちょいちょいツイッターで流れてくるe-sportsの話題に乗って書いてみました。これでまだ前提ですね。次回以降は、この種別(やタイトル)特有の事情を考慮して事業化に向けた取り組みを少し検討したいと思います。

 

  建前:ゲーム業界に精通していることが分かればゲーム会社からの依頼が来るかもしれない(仕事のうち)。

  本音:知財飽きてきたなぁ。e-sportsの事業でも本格的にやろうかなぁ、、、

  最後に、一応、参考になりそうなHPをいくつか張っておきます。景表法とか法律がらみのところはどこかで別に検討したいなぁと思っています。

note.mu

shori.link

www.4gamer.net

*操作をミスって記事を消しちゃいました。再投稿です。特にせっかくブクマやお気に入りをいただいた方すいません。