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一から始める知財戦略

知的財産全般について言及します。

スタートアップに必要な「知財戦略」(基本編:その1)

1.そもそも知財(知的財産)って何?

 例えば、日本弁理士会の説明を見ると知財とは、「人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、財産的な価値をもつものがあります。そうしたものを総称して「知的財産」と呼びます。知的財産の中には特許権や実用新案権など、法律で規定された権利や法律上ほどされる利益に係る権利として保護されるものがあります。それらの権利は「知的財産権」と呼ばれます。」と説明されています。

 簡単に言えば、例えば、抽象的なアイデアやノウハウなどの無体物が知財であり、知的財産権とは、それらを保護する権利と言えます。中小企業やスタートアップ企業であれば、特に重要なのは特許権と商標権だと思うので、後で簡単に解説します。正直な話、我々のような知財を日常的に扱っている人間でも、割と適当に使ってしまう言葉ではありますから、今の時点では、そういうものなのかという理解で大丈夫です。

 ちなみに日本弁理士会とは、知的財産に係る手続きの代理業務を行う国家資格である「弁理士」を束ねる組織であり、原則として、すべての弁理士は日本弁理士会に所属することになります。

 

2.特許権って何?

 こちらも例えば、日本弁理士会の説明を見ると特許権の保護対象となる特許とは「発明と呼ばれる比較的程度の高い新しい技術的アイデア(発明)を保護します。「物」の発明、「方法」の発明及び「物の生産方法」の発明の3つのタイプがあります。」と説明されています。

 これを見る限り、どうやら特許は、「発明(技術的アイデア)」を保護するものであり、物、方法、物の生産方法という3つの種類の発明の種類があるんだなということが分かります。

 この説明は、決して悪い説明ではありません。むしろ分かりやすく説明されていると思います。しかし、そもそも「発明」ってなんだろうという、至極当然な疑問です。

 この点、特許法では、発明とは「自然法則を利用した技術的思想のうち高度なもの」という定義がされています。余計にわからない、、、、おっしゃる通りかと思います。

 ここで、重要な点は、「発明」と呼ばれる特許法の保護対象が、これだけよくわからないものだということです。もちろん、実務的にある程度の切り分け(これは発明になるだろう、これは難しいとか)は確立されてはいるのですが、やはり曖昧な部分は残るし、弁理士により判断が異なることがあるのも当然だということです。冷静に考えれば、目に見えない抽象的な思想を言語化して法的に保護しようというのですから、そんなに簡単に切り分けできるはずはないのです。この発明というものの意味については、非常に重要ですので、詳細は応用編等、別の機会にもう少し詳細に検討します。

 

3.商標権って何?

 こちらもまずは、日本弁理士会の説明を見てみましょう。余談ですが、このような基本的な知的財産(権)の説明は、日本弁理士会や特許庁といった公的な組織が丁寧な解説を行ってくれている場合が多いので、参考にしてみてください。

 話を戻すと日本弁理士会の説明を見ると商標とは、「商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商品・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体形状や音楽等も含まれます。」と説明されています。

 ざっくりと説明すると、商標とは、類似する商品やサービス群の中で夫々の商品やサービスを識別する文字であったり図形であったりの目印のようなイメージです。例えば、需要者がチョコレートを買おうと思った場合に、値段は勿論、「Godiva」や「明治」といった商品の販売元や商品名を目印にチョコレートを購入すると思います。商標とは、自身の商品やサービスを、他人の商品やサービスと区別するための指標となる文字や図形であり、商標権者の有する業務上の「信用」を保護するものです。

 基本的に、私のブログでは、特許を中心としたネタを扱っていくつもりですが、商標は、ある意味では特許よりもはるかに重要ですので、どこかの機会で触れられればと思っています。

 

4.知財活動って必要?

 このような特許権や商標権のような知的財産権の取得を目指す活動が代表的な知財活動の一つです。例えば、AmazonやGoogleといった巨大企業であればこのような知財活動は日常的に行われています。しかし、中小企業やスタートアップ企業のような、資金もリソースも限られている企業でも行う必要はあるでしょうか。例えば、「うちは大手企業と違ってお金がないから特許出願なんてできないよ」、「うちの技術は皆に広く使ってほしいから、特許は取りません」と言った声もよく聞きます。次回の「基本編その2」では、この点について言及していきたいと思います。

 

*既に応用編の内容をブログに記載しているのですが、もう少し基本的な内容から記載してみてはという指摘を受けたので、基本編という形で再構成を行うことにしました。応用編との対応関係は、徐々に整理していきます。

*参考HP日本弁理士会:https://www.jpaa.or.jp